第69章 綿あめを持って宮本景太の口元に差し出す

田中未菜はバーの支配人にメッセージを送り、今後はもう店に行かないと告げた。

支配人からは「どうしたんだ?」と返ってきたが、未菜は理由を詳しく言わず、「学業に支障が出たくないから」とだけ返す。

スマホの画面を落とし、田中未菜はふう、と息を吐いた。

「……あの男さえいなきゃ、ほんとはまだ歌っていたかったんだけど」

客がいて、ステージがある。大きな会場には到底かなわない。それでも聴いてくれる人がいて、少ないながらも自分の歌を受け取ってくれる耳があった。

橘結衣は未菜の胸の内が手に取るように分かって、ちらりと横目で見る。

「田中未菜。別にバーで歌わなくても、ネットに上げればいいじゃん」

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